87歳の父、余命1ヶ月と言われてからの奔走

80代の両親と、これからのこと奮闘中!

[12]画面越しに父とご対面

転院の件で、父が入院している病院へ電話をかけました。すると、なんとあっさり、あと10日で退院できるので、施設へ入居の準備をしてもよいと言われました。これでやっと父の顔を見てお別れができそうです。

 

同じ日に、父の入院先から「紙おむつが足りなくなったので届けに来てください」と連絡が入りまして、母と一緒に出かけて行きました。面会禁止なので会えるはずもないのですが、もし偶然トイレなど、廊下を歩いている父を見ることができないかと期待して。

 

そして、忙しい看護師さんには大変ご迷惑かと思ったのですが、父のオムツを手渡したときに、携帯電話で画面越しに父と会えないかどうかお願いしてみますと、快く了承してくださいました。私の携帯電話を看護師さんに渡し、しばらくしてから母の携帯からラインのビデオ通話をかけました。

 

すると、入院時よりもさらに歳を取った父の顔が画面に現れました。母は小さな画面に顔をくっつけるようにして「お父さん、わたしよ、わかる? こちらは何とかやってますから、心配しないでね。○○(わたしの名前)と○○(兄の名前)がよくやってくれますから」

 

画面の中の父は、うなずくだけで何も言いません。こちらのことを分かっているのかどうかは判断できませんでした。

 

電話を切ったあと、看護師さんが戻ってきてわたしの携帯電話を返してくれて、「よかった、よかった、っておっしゃってましたよ。涙ぐんでましたよ」と伝えてくださり、ホッとしました。

 

病院からの帰り道、母はとても疲れていて、私の腕にぶら下がってヨタヨタとゆっくり歩きます。歩きながら、母がふっと微笑み「この間ね、お兄ちゃんが(わたしの兄のことです)ね、初めて腕をかしてくれたのよ。息子と腕を組んで歩くなんてねぇ」と、嬉しそうに顔をほころばせました。

 

やっぱり、母親にとって息子は特別な存在のようです。腕をかしただけで母をこんなに幸せにできる兄が羨ましいと思いました。

 

夜、兄にメールで「もっとたくさん腕を組んであげて」とお願いしました。