87歳の父、余命1ヶ月と言われてからの奔走

80代の両親と、これからのこと奮闘中!

[31]戒名

お香典返しの手続きが済み、やっと落ち着いたと思ったら、先日納骨のときにお会いした伯母から電話がかかってきました。

 

「納骨も済んだことですし、何というのかしら、けじめというか、何か送ってくださるのかしら?」

 

携帯を握りしめながら冷や汗が吹き出しました。お香典をいただいたとき「お返しなどは気にしないで」という言葉は、やはり立前だったんですね……。

 

しどろもどろになりながら、電話口で先日お香典返しの品を贈ったこと、商品の手配でもうしばらく日にちがかかることを伝えますと、伯母は品物が欲しかったのではなく、戒名を知りたかったようでした。伯父が先祖代々の名前と戒名が記された「過去帳」をつけており、それに書き加えたいとのことでした。

 

それを聞いてまたわたしは慌てました。お礼状に戒名は書いてありません。父が亡くなったときに、母は戒名も必要ないのではないかと言っていて、予定になかったのですが、兄と3人で話し合い、もしここに父がいたら欲しいと言うだろうという結果になりお願いすることになったというくだりです。

 

戒名には値段がありました。父の戒名は6文字で、祖父母は9文字でした。安価な戒名にしたことを、伯母はどう思うでしょうか?

 

父が亡くなった3日後、戒名をつくるために、葬儀社から紹介されたお寺へ故人の情報を伝えることになりました。母に「パパはどんな人だった?」と尋ねますと、開口一番「やさしい人」と言い、何でも一生懸命やる真面目な人だったわと、少しだけ弱々しく微笑みました。父が亡くなって以来はじめての微笑みでした。

 

お寺に電話したときに、母から聞き出した情報を一気に伝えました。優しくて、真面目で、DIYが好きで、英語をずっと勉強していて、40歳で脱サラして小売店を始めたことや、好きだった歌など。話し終える前に住職から遮られ、「あのね、戒名の6文字中、頭に「浄」、最後に「信士」を入れるのは決まってるの。だから入れられるのはたったの3文字だから、そんなに言われても困りますよ」と呆れられてしまいました。

 

それでも、渡されたお札に書かれた6文字の戒名には、父の名前の一文字と、「優」と「貫」という文字が入っていて、浄土往生の意には、

故人は目標を掲げてやり抜く優しい人なり

浄土にて諸佛に迎えられ永く安住される意なり

とあり、母はとても父らしいと喜んでいました。

 

そして、その戒名と意味を伯母にメールしますと、

「お父様に相応しい優しい真っ直ぐな為人が伝わり、良い戒名だと思います」と返事が来まして、わたしはうれしくなりました。

 

戒名、つくっておいて、本当によかったです!