87歳の父、余命1ヶ月と言われてからの奔走

80代の両親と、これからのこと奮闘中!

[6]やっぱり悲しいんだね、きっと。

いつも母が先になくなったときのことを考えて怯えていた。父が残された場合、私が介護することになるからだ。病院で父の余命があと1ヵ月だと聞かされた時、正直ほっとした。

 

今それを思い出していてほっとしている自分は冷たい人間だろうかと考える。でも事実だから仕方がないと。

 

子供の頃のことを思い出す。家の前で近所の男の子にミツバチを足に押し付けられ刺された時に大声で泣いた。するとトイレの窓から父が顔を出し、私の名前を叫び、すぐに団地のドアから飛び出し、白い肌シャツと白い腹巻白いステテコを履いたままサンダルをつっかけてわたしに駆け寄り、わたしを抱きかかえ家に急いで連れ帰った。いつもわたしのことを心配してくれていた。

 

突然涙があふれだした。嗚咽が漏れしばらく声を出して泣いた。泣きながら自分は一体何を悲しんでいるんだろうと考えた。私を忘れてしまった父。おもらしをする父。30秒で言ったことをすぐに忘れてしまう父。すべて母任せで自分のことを全くやろうとしない父。母に甘えてばかりの父。もう背広を着て革靴を履いたカッコイイ父はもういないのに。

 

トイレの前に下着を下ろして尻を丸出しにしてぼーっとつったていた姿。最後の記憶がそれだなんて悲しすぎる。でもやっぱり涙が出る。

 

やっぱり悲しいんだね、きっと。