87歳の父、余命1ヶ月と言われてからの奔走

80代の両親と、これからのこと奮闘中!

[28]納骨

f:id:Hitaki_Ruri:20211115205842j:plain

父が小学生のときに、後継がいない親戚の名字を引き継ぐことになったそうです。ある日を境に、5人兄弟の次男だった父は、今までと変わりなく家族と暮らしているのに、自分だけ別の名字を名乗ることになりました。

 

そして、その名前と一緒に引き継いだのが、本日父の骨を納めることになっているお墓でした。ずっと団地住まいで庭を持てなかった父は、そのお墓が立っている畳二畳ほどの敷地に苗木を育て、芝を植え、自分が持っている唯一の土地として愛でていました。

 

しかし、10年前に脳梗塞を患ってからは手入れができなくなり、その敷地は荒れていきました。小さかった苗木はいつの間にか大きく根を伸ばし、お隣の敷地にある墓石を傾かせました。業者に依頼してその木は伐採しましたが、定期的に除草剤を撒かないと、すぐに雑草が生い茂り、打ち捨てられた無縁仏のようになってしまいます。

 

雨が降り頻る中、レインコートを着た石材屋さんが、香炉の下にある重そうな石板を外したので、納骨室が見えました。中にひとつだけ、古く汚れた骨壺が置いてありました。父が引き継いだ名前の主と、そのご先祖様をひとつにまとめたものだそうです。

 

母、兄、わたしの3人以外に、父の兄夫婦だけが立ち会っていました。10年振りに会った伯父は、お洒落なマスタード色のトレンチコートに、襟元から真っ白なYシャツと黒いネクタイがのぞいていました。父よりも2つ年上で90一歩手前だというのに、背筋はしゃんと伸び、滑舌はハッキリ、声は朗々と響き、とても若々しくて父との違いに言葉を失いました。

 

「K子ちゃんとN子ちゃんはお元気ですか?」と、何十年も会っていない従姉妹の近況を聞きました。彼女たちのお父さんは、まだこうして生きているんだな。

 

一月前、火葬のあとすぐに、石材屋さんに電話で納骨を依頼し(ちなみに金額は40,000円でした)、当日は花と線香を準備してくるようにと言われていたのに、すっかり忘れてしまい、石材屋さんが用意してくれたピンク色の百合を花立に生け、線香を焚いて、父の骨壺を墓下に納めました。

 

帰りの車の中で、母は大仕事を終えたようにホッとしていて「あとはお香典返しを済ませればひと段落ね」と言いました。

 

スマホの画面に、墓の前で撮った伯父の顔を拡大しました。

父に似ている。

いいな、まだ生きていて。父もこんなに元気ならずっと生きててほしかった。条件付きなのはいけないこと?